山中リエ子 編4 夕焼けニャンニャン
「‥‥と言う訳で、第二ラウンドにいきたい
と思います」
 奈緒人が沈痛な面持ちで審判を始める。
「えーっ、もういいよ。夕焼けニャンニャン
始まっちゃうし‥‥」
「小学生がそんなもの見るなっ!」
「とにかく、もう一回勝負よ。絶対にギャフン
て言わせるんだから」
「ギャフン」
 正義は静かに帰り支度を始める。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「正義君、意地悪しないで受けてあげなよ」
「だって今日、スーパー写真塾の発売日
なんだぞ、買い逃したらどうするんだよ。
夜のオカズなしなんてやだぞ」
「ゴチャゴチャ言ってないで、ご飯くらい
私が作ってあげるわよ」
 何を勘違いしたのかリエ子が間に入る。
「あのなっ!夜のオカズって言っても、その
オカズじゃ‥‥」
「そうだよ山中さん、正義君のオカズって
言うのは‥‥ムグウッ」
 正義に押さえられる勇。
「委員長、夜のオカズになってくれるの?」
「卵焼きくらいなら作れるわ」
「ちょっと委員長!だからそのオカズじゃ
ないんだって‥‥」
「七瀬君は黙ってて、絶対に勝つんだから。
もう一度、勝負よ」
「よっしゃ、俺が勝ったら夜のオカズになっ
てもらうからな」
 正義がジャングルジムに上がろうとする
と、リエ子がトイレ清掃用のゴム手袋を付
けるのが見える。
「へぇー、考えたね委員長」
「ちょっと待て、そんな汚い手ありかよ」
「汚いのはお前のそれだ」
 早くもコンニチハをしている正義のチンチン
を指さす。
「ジッパー壊れちゃったんだよ‥‥なんなら
委員長のブルマー履こうか?」
「履くなっ!もういい、始めるぞ」
 二回戦、委員長の素早い動きに翻弄され
るも正義は5ポイントを上げる。後半、リエ子
は正義のフリチンダンスに幻惑されるが、
ゴム手袋で見事チンチンをはたき、ダメージ
による落下と合わせ3ポイント。ピョンピョン
と跳びはねて立て直そうとする正義だが、
激チンによる撃沈は時間の問題に見えた。
「くうっ、委員長、思いっきりはたきやがって
‥‥」
「出してる方が悪いんだ。ペナルティは取ら
ないからね」
 奈緒人が言い放つ。
「万事休すか‥‥」
「覚悟しなさい」
 マーメイドターンでくるりと一回転する際、
ピンクと白のチェックのパンティーが露になる。
「おおっ!」
 リエ子のゴム手袋が迫るその瞬間、それは
爆発した。
 ドピュ!ドプッ!
 生臭い白い液体がリエ子の顔面を直撃する。
「なにコレ‥‥気持ち悪いよ‥‥」
「出ちゃった‥‥」
「出ちゃったじゃない!」
 奈緒人が怒鳴る。
「コレってもしかして‥‥」
 顔からネットリと垂れる精液を見つめながら
不安気に聞くリエ子に正義がダメ押しをする。
「精子が出るのを制止出来なかった‥‥」
「‥‥‥‥キャァァァァァァァァァァァァァッ!」
 急いでジャングルジムを降り、昇降口の
水飲み場へと再び走るリエ子。
「俺の勝ちだな」
「‥‥‥‥一度、死ね」
 奈緒人がボソリと呟いた。
「卑怯者っ!」
 十五分程たって、顔を洗い終えたリエ子が
不機嫌そうに帰ってくる。
「射精はいけないなんてルールはないぜ」
「普通ないよ‥‥」
「‥‥5ポイント対1ポイントで変態の勝ち
‥‥」
 仏頂面の奈緒人が試合終了を宣言する。
「オッカッズ、オッカッズ」
 フリチンで踊りながら奇声を上げる正義。
「分かったわ、桧垣君の家に行って何でも
作ってあげるわよ」
「委員長‥‥」
「そのオカズのコトなんだけど‥‥」
 奈緒人と勇が耳打ちをする。見る間に
顔が真っ赤になるリエ子。
「わ、私‥‥塾があるから‥‥これで‥‥」
 慌てて帰ろうとするリエ子の前に正義の
フリチンダンスが立ち塞がる。
「オッカッズ、オッカッズ」
「ちょっと桧垣君‥‥」
「オッカッズ、オッカッズ」
「あの‥‥」
「それオッカッズ、それオッカッズ」
「‥‥‥‥分かったわよ、オカズでもデザート
でも好きにすればいいでしょ!」
 ヤケになって叫ぶリエ子だった。



 校庭の隅にある体育用具室。薄暗い部屋の
中でリエ子と正義が向かいあっている。
「オカズってどんなことすればいいのよ」
「うーん‥‥まずはストリップをしてもらおっか
な?」
「ストリップ?」
「服を一枚ずつ脱ぐんだよ、俺の前でね」
「そ、そんなこと‥‥」
「オカズになるんだよね」
「‥‥‥‥覚えてなさいよ」
 プチン‥‥プチン‥‥。
 小さな指が白いブラウスのボタンをゆっくりと
外していく。
 ジー‥‥‥‥パサッ。
 ジッパーを下ろし、ロングスカートがスルリと
 床に落ちると、純白の薄いスリップ一枚に包
まれたリエ子が露になる。両手で前を押さえ隠
そうとするが、その仕草がまた可愛かった。
 暗い体育用具室に差し込む僅かな光が当た
り、幼児体型のぽちゃっとしたラインを浮かび
上がらせる。
「ブラはしてないんだ」
「ママがまだいらないって‥‥」
「可愛いオッパイだもんな」
 リエ子の胸はようやく発育が始まったばかりで、
なだらかな胸板にほんの少しこんもりとした起伏
があるだけだった。
「‥‥‥‥」
 悔しいのか恥ずかしいのか、顔が赤くなる。
「チェックは好き?」
 スリップの下に透けて見えてしまっているパン
ティーを見ながら、意地悪く聞く。
「‥‥‥‥」
 コクンと恥ずかしそうに頷く。
「そろそろ手を下ろしてもらおうかな」
「え‥‥でも‥‥」
「駄目なの?」
「だって‥‥‥‥私の‥‥小さいから‥‥」
「小さいから」
「見てもつまんないよ‥‥ガッカリすると思う‥‥
お子様だもん」
「この前のこと気にしてるんだな‥‥」
 コクンと頷くリエ子。
 身体検査の際、クラスの女子の中でリエ子だけ
がブラジャーをしていなかったことがあったのだ。
サイズ的にはリエ子とさして変わらない女子も何
人かはいるのだが、口裏を合わせたように見栄と
してブラを着けてきた為、リエ子だけが上半身、
裸で検査を受けたのだった。
 少年のようなオッパイを一生懸命、両手で隠し
ながら検査を受ける姿を正義は知っていた。
 この後、心ないクラスの女子から男子に伝わり、
未熟児だの、発育不良のお子様だの、ノーブラ
委員長だのと、酷いからかわれ方をしたのだ。
「気にするなって、すぐに誰も言わなくなったろ」
 誰も知らない裏で、正義と奈緒人の二人が、
リエ子をからかった男子を実力行使のともなった
注意をしたのだが、それは言わなかった。
「でも‥‥でも‥‥」
「俺が悪かったよ。可愛いオッパイだなんて言って
ゴメン‥‥お詫びにおまじないをしてあげるから」
「おまじない?」
「将来、オッパイがZカップになるおまじない‥‥
手をどけてみて‥‥」
「えっ‥‥うん‥‥」
 両手をどけると、うっすら透けた胸が見える。
「いくよ‥‥」
 こんもりとした左右の膨らみに、スリップごしに
優しくキスをする。
「あっ‥‥‥‥」
 小さく声を上げるリエ子。
「よし、これでZカップ間違いなし!‥‥‥‥そろ
そろ帰ろっか」
 笑いながらリエ子の服を拾い、埃を綺麗にはたく。
「‥‥‥‥待って」
「うん?」
 リエ子がポニーテールを縛るリボンを解く。
 ファサッ‥‥。
 長い黒髪が美しく流れ落ち、少女を夕日の光で
輝かせる。リエ子はスッと身体を開き、正義に裸
身を晒すように見せつけた。
「‥‥私を‥‥オカズにして‥‥」
「山中‥‥‥‥でも‥‥」
 リエ子の乱れた髪が色っぽく、正義はドキドキ
してしまう。
「‥‥オカズに‥‥ならないかな‥‥」
 哀しそうに俯く姿にそそるものがある。
 正義の限界でもあった。
「なるなる!いただきますっ!」
 サルのようにチンチンをしごき始める正義。
「桧垣君‥‥ねぇ‥‥なんだか‥‥もうさっきの
が出そうだよ‥‥ちょっと聞いてる‥‥ねぇ‥‥
出そうだよ‥‥ねぇってばぁ!」

「委員長っっっっっ!」
 ドピュルッッッッッ!
「‥‥‥‥キャァァァァァァァァァ!」
 この後、リエ子は三回目の昇降口の水飲み場
へ駆け込むことになった。



「もう、最低っ!」
 ホッペを膨らませるリエ子。
「ゴメンて‥‥」
 必死に謝る正義。
 日は暮れかかろうとしていた。真っ赤な夕日が
二人を赤く染める。勇と奈緒人は気を利かせたの
か呆れたのか、既にいなかった。
 琥珀色の帰り道を歩きながら、ひたすら謝る
正義にソッポを向いていたリエ子がようやく機嫌
をとり戻す。
「分かったわよ‥‥許すから‥‥返して」
 スッと手を差し出す。
「何を‥‥」
「ブルマー!」
「おっと‥‥そうだった」
 ポケットから取り出したそれをリエ子に手渡す。
「あれっ‥‥何よコレ‥‥」
 ブルマーがパリパリに張り付いていた。
「あ‥‥いや‥‥拭く物がなかったのでつい‥‥
そうしたら気持ち良くなって更につい‥‥」
「ついじゃないっ!」
 バリバリとリエ子の爪が正義の顔を掻き毟る。
血まみれの正義が気絶する前に見たのものは
夕日を背負いアッカンベーをするリエ子の姿だった。




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