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巻島京子 編3 トールハンマー
「ゼェ‥‥ゼェ‥‥おかしい‥な‥‥捕まえ
られな‥い」
 ポタポタと汗を垂らしながら、京子を追うの
だが、追い切れず逃げられる。
「どうしたのよ、正義。あたしをオカズにした
いんじゃないの?」
 余裕で逃げ回る京子。
「う、うるへー‥‥ゼェゼェ」
「やっぱり‥‥」
 勇が頭を抱える。
「そう。リーチやパワーに差のない二人にあ
る決定的な差‥‥スタミナさ」
 ニヤリと笑う奈緒人。
「それじゃあ、十分の試合を倍の長さにした
り、インターバルやタイムを無くしたのはワザ
と‥‥でも、幾らなんでも三試合分ぐらい
で‥‥」
「先攻で正義を怒らせて全力を出させたのも、
後攻でフェイントをからめてダッシュを連発
させたのも‥‥さ。正義には五、六試合分に
感じてるはずだよ」
「ゼェ‥‥ゼェゼェ‥‥タッチ〜」
 辛うじて京子の手に触れるこ上が出来た。
「運動不足じゃないの?日頃から、ちゃんと
身体を鍛えてないから、へばるのよ」
「ゼェ‥‥昨日‥‥成美ちゃんのブルマ写真
‥‥オカズにして‥‥六回‥‥抜いたのが‥
‥ゼェ‥‥まずかった‥‥か‥‥」
「あんたねー、死ぬわよ」
 結局、力を振りしぼって京子から奪ったポイ
ントは僅か五ポイントだった。
「後攻、京子。始めっ」
「ゼェゼェ‥‥インターバル‥‥せめてタイ
ム‥‥だけでも‥‥ゼェ」
「駄目だ、インターバルもタイムもなし」
 冷たく言い放ち、開始の笛を吹く。
「ゼェ‥‥フリフリ‥‥ブラ‥‥ゼェ」
 息も絶え絶えの正義だが、そこからのスパー
トは凄まじかった。
「早いっ!」
 その底力に驚く京子。
「馬鹿なっ!スタミナは残ってないはず‥‥」
「フリフリ‥‥ブラ‥‥ブラ‥‥」
口元から涎を垂らし、うわ言のように呟く。
「ひょっとして‥‥エロパワー‥‥」
 顔をひきつらせる奈緒人。
「フッ、ならこっちも奥の手を出すまでっ、
行くわよっ!」
 そう言って、京子がジャングルジムの角に掴
まると、そのまま身体を左右に振り子のよう
に揺すり始める。
 ブィィィン、ブィィィン。
 そのパワーにジム全体が横揺れを起こす。
「ゼェ‥‥何をしようってんだ」
 対の角で京子の様子を見る正義。
「トールハンマーァァァ!」
 振り子運動で大きく反動をつけた京子が、右
足でジムを蹴りつけ、慣性をつけたまま右方
向へと自らを放り投げた。
 バシィィィン!
 慌てて京子の反対方向へ逃げようとした正義
だったが、バーを掴もうとした右手に走った
電流のような衝撃に思わず手を放してしまう。
「あ、あれ?」
  地面に尻もちをついたまま、衝撃の走った右
手をじっと見つめる。
「どうしたの?正義君らしくないよ、落下なん
て‥‥」
  駆け寄り、心配する勇。
「あ、いや、ちょっと掴みそこなっただけだ」
  右手を何度も開いたり握りしめたりする。
「落下だからペナルティのマイナスニポイント
だぞ」
  奈緒人が警告する。
「分かってるって‥‥」
  ジムに上る。
「クスッ」
 そんな正義を見て京子が笑う。そして再び、
ジムの角に掴まると振り子運動を始める。
 ブィィィン、ブィィィン。
 ジムが横に揺れ始める。
「よっしゃあ、来いっ!」
「トールハンマーァァァ!」
 バシィィィン!
 今度は左足で蹴り付け、そのまま跳ぶ。
「よし、今度は‥‥」
 左手でバーをしっかり掴もうとするが、ビリッ
と先程と同じ衝撃が左手を襲う。
「正義君!」
 バランスを崩して落下、地面に尻もちをつく。
「あ、あれぇ?」
 今度は左手を見つめた。確かに電流みたい
な何かに襲われたのだ。しかし、手に火傷の
ような後はない。
「クスッ、どう、トールハンマーのお味は?」
「トールハンマー?」
「トール‥‥確か‥‥神話に出てくる雷神と
かなんかの意味だったような」
「要塞の兵器の名前じゃねぇの?」
「ようするに攻撃としての雷ってことなんだ
ろうだけど‥‥」
「イテッ!勇、人の足踏むなよ」
「あっ、ゴメン」
「ったく、気をつけてくれよ‥‥ん?」
「どうしたの?」
「足か‥‥」
 考え込む正義。
「おーい、タイムは無しだぞ。それに正義、
ペナルティ二ポイントな」
 楽しそうな奈緒人。
「てめぇ、よーしそれなら‥‥」
 ジムに上がり、身構える。
「いくわよっ!」
 ブィィィン、ブィィィン。
「トールハンマーァァァ!」
 バシィィィン!
「これならどうだっ」
 両腕をバーに絡ませ、しっかりと掴む。
ビリッとした衝撃に襲われるが今度は
落ちなかった。
「やった、正義君」
「頭いいだろ、俺」
「頭悪いだろ、お前」
 正義が揺れに耐えている間に京子が1レーン
もの差を詰めて迫って来ていた。
「おわあっっっ」
  慌てて逃げるが、間に合わず腕をタッチされ
る。
「京子ちゃんの一ポイントなんだけど、正義
が先攻でとった五ポイントとペナルティの二
ポイント二回で、マイナス四ポイント。合計
一ポイント‥‥同点だ。つまり今度、正義が
落下するかタッチされた時点で京子ちゃんの
勝ちだから、そのつもりで」
 残り時間は、まだ三分以上ある。正義の負け
は確定的だった。
「あっ、京子ちゃん。ジャージの背中にゴミ
ついてるよ‥‥」
「えっ、本当?」
「取ってやるよ‥‥」
 ポンポンと京子の背中を払ってやる正義。
「ありがとう。お礼にトールハンマー使うの
やめてあげようか?」
「いや、どうせトドメをさされるなら、トー
ルハンマーの方がいい‥‥京子ちゃんが
開発したすごい技で敗北したいんだ」
「へぇ、覚悟を決めたようね。それじゃ、お
望み通りの技でトドメをさしてあげるわ」
「ああ、頼むよ‥‥」
 言いながらほほ笑もうとする正義の顔は、少
し悲しそうだった。その正義の希望に答え、
今までの反動よりも、更に反動をつけて振り
子運動をする京子。
 ブィィィン、ブィィィン。
「いくわよ、トールハンマーァァァあっ?」
 ‥‥プツンッ。
 音とすればこんな音だろう。京子は自分の
背中でこんな音がしたような気がした。ブラの
ホックが外れたのだ。いきなり解放された二
つの丸みがプルンと弾け、京子のバランスを
大きく狂わせる。
「うわっ!」
 落下し、尻もちをつく。
「どうしたの京子ちゃん?」
 慌てて駆け寄る奈緒人。
「‥‥ブラのホックが外れちゃった」
「えーっ!」
 慌てる二人に正義がニッコリとほほ笑む。
「ペナルティ二ポイント、タイムは無しです
からよろしく」
 その言葉に青冷める京子。
「い、いいわよ。ブラのホックが外れたくら
いなによっ!」
 ブィィィン、ブィィィン。
 ジムの角に上ると、再び反動をつける。しか
し、振り子運動でオッパイが左右に揺れ始め
るとバランスがとりにくくなる。
「ほほぉ、京子ちゃんのオッパイがプルンプ
ルン揺れて絶景だねー」
 鼻の下をのばす正義。
「ブラのホックさえ‥‥」
 技のタイミングになかなか入れず、戸惑い
ながら振り子を続ける。
「いいのかなぁ‥‥このままだと、マイナス
一ポイントで京子ちゃんの負けだよ。そうし
たら、俺が京子ちゃんのブラのホックを付け
てあげるね」
「ま、負けてたまるかぁぁぁ」
「京子ちゃん駄目だっ!」
 奈緒人が止めようとするが遅かった。
「トールハンマーァァァ‥‥ァ‥‥アン」
 バシィィィンと同時に京子の胸の先端がバー
に触れてしまったのだ。色っぽい声を出して落
下する京子。
「勝ったな‥‥」
 正義が満足そうに笑った。



「京子ちゃんがジャングルジムの角で振り子
のように身体を大きく揺すり、横揺れを起こ
す。更に振り子の反動を利用して、次の角へ
飛び移る。まあ、それを見た人間は慌てて逃
げ出すわけなんだが、飛び移る際に京子ちゃ
んが片足を強く蹴りつけて、大きく横揺れを
起こしているジャングルジムに一瞬だけ、縦
揺れを起こさせる。それに気づかずに逃げよ
うとした人間は、横揺れと縦揺れの混ざりあ
た強烈なブレに襲われるわけだ。この電流が
走ったような強烈なブレこそがトールハンマ
ーの正体‥‥あってる?」
「ハイハイ、百点満点よ」
 体育倉庫の中、正義と京子が跳び箱の上に
座りトールハンマーの謎解きをしていた。奈緒
人と勇はすでに帰った後、約束を果たす為に
京子自らが残ったのだ。奈緒人は猛反対した
が京子が約束は破りたくないと奈緒人を説得
した。
「慣性をつけて跳ぶことで、京子ちゃんは空
中へ逃げると移動を同時にこなし、ブレを恐
れてジムにしがみついている人間から1レー
ン分ただで貰えるってワケか‥‥すげえ技だ」
「発案は奈緒君よ。ただ、実行可能なのはあ
たしだけなんですって」
「伏線が効いてるからな‥‥へろへろになっ
てダッシュ出来ない所をドーンだから」
「攻撃オンリーって所もあるから、スタミナ
っていう逃げがないときついしね」
「まあ、久しぶりに楽しかったぜ」
「じゃあ‥‥」
「もうちょっと楽しませてくれる?」
「‥‥やっぱり駄目?」
「駄目ー」
 ニッと笑う正義の前へ、恥ずかしげにおずお
ずと立つ京子。
「だ、大サービスなんだぞ、あ、ありがたく
見ろよ‥‥」
 両の手をブルマーの端に差し込み、ゆっくり
とずり降ろしてゆく。
「いいぞっ、京子ちゃん。日本一っ!」
「そういうストリップみたいな声援を入れる
なっ」
「ストリップだぜ、小学生のストリップ」
「う〜っ、誰がやらせてんのよ」
「同級生の男子の前で強制ストリップをさせ
られる小学六年生、巻島京子。燃えるシチュ
エーションだねぇ」
「変なことばっかり言うなっ」
 顔を赤らめる。
「ほらほら、脱がないと俺が脱がせちゃうぞ」
「あ、あたし、今日、早く帰らないと家の手
伝いが‥‥」
「今日は友達とドッチボール大会の練習があ
るから遅くなるって、お母さん言ってたなぁ」
「何であんたがそんなこと知ってるのよ!」
「やっぱりな‥‥」
「あっ!しまった‥‥」
 舌を出す京子。
「同情の余地なしだな」
「分かったわよ。脱げばいいんでしょ、脱げ
ばっ」
「ただ脱ぐなっ、恥じらいを持って、隠すよ
うに脱ぐんだっ」
 身振り毛振りで指導する。
「あんたはオッサンかっ」
 言いながら思いきってブルマーを脱ぎ捨てる
が顔は真っ赤になってしまう。普段は勝ち気
で男勝りだが、下着姿になるということで自分
が女の子であることを自覚させられる。
「お花のパンティーが可愛いよ京子ちゃん」
「くっ‥‥」
 正義もその辺を心得ていて、ワザと京子が
女の子であることを強調するのだ。そして更
に恥ずかしがる京子を見て楽しむのである。
「じゃ、おニューのブラを見せてもらおっか
な‥‥」
「‥‥わ‥‥わかったよ‥‥ほ、ほら」
 ゆっくりと体操着の前をずりあげてゆくと、
パンティーとお揃いのブラジャーが剥き出し
になる。小学六年生の割には元気なオッパイ
がその奥で微かに息づいていた。
「フリフリとリボンがたまんないっすね〜」
 鼻の下をのばす正義。
「早く、オカズにでも何にでもしろっ」
 男の子の好奇の視線に晒し、自分が女の子
であることを確認され、ニヤニヤと笑われると
耐えようのない恥辱に襲われる。
「ブラのホックはめ直しちゃったか、折角、
外したのに‥‥生のオッパイも見たかったな」
 ポツリと独り言を漏らす正義。
「ブラのホック?折角、外した?」
「あっ、いやっ、何でもない」
 慌てる正義。
「そういえばホックが外れる前に、ジャージ
の背中にゴミが‥‥って‥‥」
 ギロリと正義を睨む京子。
「ち、違うって、そうだ、京子ちゃんの胸が
あんまりにも苦しそうだったからホックを
緩くしてあげたんだって‥‥ねっ」
「ねっ、じゃないっっっ!」
「ぐわあぁぁぁぁっっっ!」
 その後、ドッチボールの特訓と言う名の地獄
のリンチほ夕日がトップリと暮れる二時間も
続けられたという。






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