「マーメイドターン!」
鉄パイプを正方形に組み合わせた遊戯具、
ジャングルジムの中を少女が駆ける。
「っとぉぉぉ!」
ジムの外周を伝っていた少年が少女のタッチ
を間一髪でかわしたところで笛の音が鳴った。
「ピーッ、時間切れ‥‥委員長5ポイント、正義
‥‥6ポイント‥‥正義の勝ち‥‥」
二人のジャングルジムでの追いかけっこを
審判していた少年はその結果を嫌々に宣言
する。
「あーっ、もうちょっとだったのにー」
少女が悔しそうに頭を振ると、大きなポニー
テールがフルフルと揺れる。
「ハァハァ‥‥まだ‥‥ハァ‥‥まだだな‥‥
ハァハァ‥‥」
少女に追われていた少年が髪までビッショリ
と汗に濡らしながら息をつく。
「惜しかったよ。この前よりも動きが良くなって
たし、特訓の成果が出てたね」
審判をしていた少年、目深にかぶった帽子の
せいで分かりにくかったが悔しそうな表情が
チラリと伺えた。
「ありがとう。七瀬君のおかげよ」
「‥‥ハァハァ‥‥」
「委員長が頑張ったからだよ」
「教え方がいいんだもん」
「‥‥なあ‥‥あのさ‥‥」
「そんなことないって」
「また特訓してね」
「お前ら‥‥」
「時間あるし、今日のおさらいでもしようか」
「無視するなぁ!明日の特別授業、俺も出させ
てもらうからな!」
「あのなぁ、あれは女子の為だけに行われる
授業なんだぞ。身体の仕組みだとか‥‥その
女性としての‥‥現象だとか‥‥勉強するん
であって、男のお前が受けてもしょうがないだ
ろう」
「そうよ、男子は自由時間なんだから、外で
沢山、楽しく遊べばいいでしょ」
「俺は女子の身体の仕組みとか現象を沢山、
楽しく勉強したい!」
「駄目だって言ってるんだ!」
「男子がいると女子が恥ずかしがるのよ」
「約束したじゃないかぁ」
「あれは‥‥授業の内容ぐらいなら教えられる
という意味で‥‥」
「約束ぅ、約束ぅ」 |