「タッチ」
ジャングルジムにしがみついたままのリエ
子の頭に正義の手がポンとのる。
「外側じゃ駄目なのかな」
リエ子はジムから降り、赤いランドセルを立
て掛けた緑色のポールネットに寄りかかった。
「動きはいいんだけど、アウトレーンはりーチ
の差が極端に出るんだ。タッチするだけじゃ
なくて、ジムのブロック一マス先を掴めるのと
掴めないとでは進み方が全然違うから」
同様、リーチのない勇がリエ子を慰める。
「内側だったら、早いのに」
「まあな、インスペースじゃリーチのある奴
は大抵、タッパがあるから動きずらいし、リ
ーチ自体が邪魔になる時もある。幾ら長い
リーチを延ばしても相手がそこにいなけりゃ
意味がない」
正義もー休みとばかりに、ボールネットに
寄りかかった。
「最近、インスペースでは山中さんに勝てな
いもんね」
「外側でも勝ちたいなぁ」
「まあ、アウトレーンで俺に勝てるやつはい
ないってことよ。あの裏切り者でもな」
「山中さん、もう時間だよ。ドッチボール大会
のことで帰りの会が長引いたから‥‥塾、
今日あるんでしょ?」
「あっ、いけない!じゃあ、私、帰るね。さ
よなら松林君、さよなら桧垣君‥‥桧垣君、
ジャングルジムで女の子のスカートの中ばっ
かり覗いてたら駄目だよ」
「大丈夫だよ。最近、ほとんどの女の子たち
はブラックパンツ履いてるから」
「ブルマー履いてるからって覗いちゃ駄目な
のっ!」
「委員長がホワイトパンツでジャングルオニ
やってくれたら、もう覗かないんだけどなあ」
「な、なに言ってるのよ」
顔を赤くするリエ子。
「あ、ピンクのチェックでもいいかな」
「‥‥馬鹿っっっ!」
真っ赤になって、走り去るリエ子の後ろ姿を
眺めみる正義。
「小学生は可愛いねぇ」
「‥‥君も小学生だ‥‥」
ポツリと呟く勇だった。
「‥‥‥‥二つ質問がある。一つはここで何
してる?もう一つはアウトレーンで誰が勝て
ないって?」
いつからいたのか、両手を不機嫌そうに組
んだ奈緒人が立っている。
「見りゃ分かるだろ、ジャングルオニだよ、
裏切り者。体育館でドッチボールの特訓は
どうした?」
こちらも不機嫌そうに言葉を返す。
「だから言ってるだろ!来週の大会まで京子
ちゃんの協力してるだけだって」
「あのなぁ、ドッチボールよりジャングルオニ
の方が面子が足りないんだぞ。だいたい京
子ちゃんの馬鹿力なら一人でだって勝てるだ
ブフッ!」 |